トマトが枯れました!キュウリが枯れました!なぜ?

6月に入ってから、全く同じような質問を連日受けるようになりました

結論から先に書いた方が良さそうです。
(思いつくままに書きましたので重要度と順番は無関係です)

 

 

【発生の条件や兆候】

①病気は高温、あるいは多湿条件下で発生しやすい

②トマト、茄子、ピーマン、ジャガイモこれらなす科のグループ、胡瓜、西瓜、メロンなど瓜類、ゴーヤ、南瓜などのウリ科のグループ。夏野菜ではこの二つのグループで発生しやすい。

③ ②と関連して、同じグループの野菜を数年開けずに同じ畑 (連作)、もしくは排水が流れ込むという意味で上下、あるいは連結している畑で栽培した場合に発生しやすい。(連作ではないけれども連作に準じる影響が出る可能性があるということ)

畝上げが不十分な畑、排水が不良の畑。雨が降ると通路に水がたまりなかなか乾かぬ畑ではとくに発生しやすい。
またいくら平常時排水の良い圃場でも、大雨で冠水すると、ほぼ確実に発生します。ハウスでも露地ででも同じです。通路の冠水で半日、通路より上まで冠水すると約3時間で根が死んでしまいます(6月のタキイでの研修会で学習済)。そうなればほぼ100%発病します。

⑤肥料、特に窒素が多い場合。つまり軟弱な場合発生が多い。

⑥収穫残渣を安易にスキ込んだ畑に発生が多い。

⑦従来の湯気が出るように高温で発酵した完熟堆肥は影響は少ないが、低温で発酵させた所謂「ぼかし」など、堆肥の素材によっては、発病の誘因となりうる線虫が多く含まれていたりします。また、素材となる有機物に、安易にナス科やウリ科の栽培残渣を利用している「ぼかし」などは危険性が高いです。地力増進のために混入した有機質が原因となる場合もあります。慣行の牛糞堆肥などが最も安全だと思います。

雨や小雨の日に、無理をして誘因、施肥、収穫、薬散など管理に入った場合に発生します。支柱を立てたりするのもよくありません。(後述)

 

 

【対策】

結論が前後した感じですが(^_^)標題の「枯れちゃった!」の原因のほとんどが、ナス科の場合は、青枯れ病。ウリ科の場合はツル割れ病だと考えられます。そのように仮定して対策を考えてみます。

高温、多湿・・・まさに梅雨に突入した今頃から梅雨明けにかけて、青枯れ、ツル割れ病は多発します。発病したら直す薬はありません。病気になってしまった株を抜き取ってそれ以外の株への感染源になる事を防ぐ位しかなすべき事はありません。 だから、この事態を予想して苗を定植する前に対策を講じておくことが最も効果的だと言えるでしょう。

 

連作をしない
少なくとも3~4年はナス科ウリ科の同じグループ内の野菜は栽培を避ける。
大切なことは、例えば、
ジャガイモ→トマト→ナス→ピーマン→ミニトマト を一年ごとに作ると連作になります。
南瓜→胡瓜→西瓜→南瓜→野菜瓜→ゴーヤ これもウリ科のものすごい連作になると言うことです!
絶対に避けましょう。
ジャガイモ→ダイコン→胡瓜→エンドウ→トウモロコシ→玉葱
これは ナス科→アブラナ科→ウリ科→マメ科→イネ科→ユリ科
と同じ事なので、連作障害は起きません。
あるいは、(可能なら!?)連作をやむを得ずする場合は水田化したり湛水処理をすれば耕種的な完璧な土壌消毒となりますのでこの場合はOKです。

 

接木苗を使うこと
青枯れ、ツル割れ病は典型的な土壌病害です。土中の病原菌が根から侵入し、導管を閉塞することにより水分の吸収を妨げて急激に凋れをおこします。だから土の中には病原菌は存在するけど根からの侵入を防げれば発病することはないだろうという考えが接木苗を使う最大の理由です。 ナス科では、それぞれの野菜の野生種、ウリ科では南瓜やかんぴょうなどツル割れ病に抵抗性のある種を台木とすることで病原の侵入をフィルタリングすることが可能です。

ナス科、ウリ科で接木苗を使うことは、青ガレ、ツル割れ病を含む多くの土壌病害に感染しないようにする「保険」をかけているのと同じです。安価な「実生苗」で上手くいく場合もあるかもしれませんが、高価な「保険に加入済の接木苗」を使うことで得られる安心感への必要性はますます高まっていくでしょう。

 

③接木苗を上手に使うこと
せっかく接木苗をつかってもマズイ方法で管理すると台無しです。プロでもうっかりミスしますので細かいことを書いてみます。
まずは、浅く植えること。これは穂木の根を出さないようにするためです。接木苗はどうしてもひょろりと伸びた苗になりがちで土の中に深く植えたくなるものです。穂木の自根が出てしまうと、このたった一本であっても畑と穂木が連結してしまい病原の侵入が起きてしまうから絶対に避けなければいけません。
次に、株元は敷きワラをせず、太陽光が直接当たるようにして、乾燥させなければいけません。マルチに植える場合は余り小さな穴に植えるのは禁物です。ツル割れ病は特に地際部に発病しますので特に注意して下さい。また、植えるときは畝より接木苗の土の面が高くなるように盛り上げておくと最良です。

 

④例えばコンパニオンプランツ
スイカや胡瓜の株元に葱を植えると良いといわれています。異なったグループの野菜を植えることにより共生関係をうまく使えれば効果があるという意味です。葱の例では葱の分泌物でフザリウムの繁殖を抑制できると言われているので多くの土壌病害を押さえる働きが期待で来ます。(私もやってみました。スイカの場合は灌水をあまりしないので、とても効果が高いと思いましたが、胡瓜は灌水のたびに株元が濡れるので高温期は葱の方が根腐れをおこしてしまい上手くいかなかった経験がありますけど・・・(^_^))
また、矮性のマリーゴールドを植えると線虫が抑制できます。
バジルやシソ科のハーブを植えておくとその香りでシソ科には寄りつかない、ウリ科の害虫ウリバエやナス科の害虫ニジュウヤホシテントウムシダマシなどの飛来を抑制する効果が期待でそうです。

 

 

《定植した後の対策》

小雨の中や、雨後まだ畑が湿っているとき、畑に足を踏み入れるな!

水分が多いとき、根は空気(酸素)を求めて地表付近に毛細根を延ばします。逆に乾燥してくると水を求めて、地中深くに根を伸ばそうとし根の分布は全く逆になります。
話はそれますが、土壌の理想の構造は土相、気相、液相のバランスがとれていることが必要で、根は養分や水分を吸収するだけでなく呼吸をすることも大切な役割の一つです。
だから、土の湿り具合と根系の分布には密接な相関が生まれます。

 

もし、収穫、誘引、芽カキ、薬剤散布、施肥など必要な管理作業であっても、(例え畝間であっても)人間が足を踏み入れる場合には、畑が乾いているときでなければいけません。 特に湿度の高い梅雨時には注意が必要です。
湿っているときは、畝の表面はもとより通路であっても、目に見えぬ毛細根が広く張り巡らされていると想像して下さい!そこに人間が踏み入れれば足の圧力で毛細根はズタズタに傷つけられることになります。しかも周りは泥水がいっぱい。 泥水の中にウジャウジャ生息するバイ菌が易々と根の中に侵入することになります。
後はご想像におまかせしますが、数日後、雨が上がり日差しが強くなってくると、あっという間に全身がしおれてしまいう事態につながっていくのです。

 

付け足しになりますが、排水不良の畑は、天気が良い日に、畑全体の周囲や畝間に鍬を入れ畝ができるだけ高くなるように排水をはかり、水たまりができない様にすることも、気休めではありますが有効だと思います。
ここまで書いてきて過去に類似のブログを書いていたことに気づきました。写真もありますし、重複していることは特に重要なことなので参考になると思います。お読みいただければ幸です。

※キュウリ、しおれて枯れてしまいました!(2012/6/12)

※キュウリ、ナス、トマトが枯れちゃいました! (2013/7/2)

※雨が降ったら畑に入るな(キッパリ!) (2014/6/30)

※画像はタキイの野菜病害の診断技術(絶版)より引用