暑中お見舞い申し上げます

生長のSW 例えば早生系玉ねぎと中晩生系玉ねぎの違いなど・・・
このブログをお読みいただいている皆様にお見舞い申し上げたく書かせていただきました。古くからのお客様に実際に差し上げている「暑中見舞いハガキ」と同じ文面です。
今後ともよろしくお願い申し上げます。

 

昨日書きました通り、1カ月以上もネタ探しに悶々とした挙句、「玉ねぎの不作」を取り上げようと思いました。佐賀県白石地区の水田裏作の5月どりの玉ねぎが超不作であるとNHKのTVニュースで繰り返し報道されていたからです。実際に、白石地区のお客様が来店されて、「べと病などの病害と天候不良のために例年の1/10の出来であった!」と苦境を語られていました。何度消毒しても病気が改善できなかったので、耐病性の点で品種選択の相談に乗ってほしいというのがご来店の理由でした。

 

私はタキイやサカタの研修会に出席して、技術の担当者に直接「べと病」について尋ねました。玉ねぎの品種の力でべと病などに対処できないものだろうかと必死に調べたのです。しかし、ホウレンソウなどとは違い玉ねぎの場合は、連作地でのべと病のレースの進化について行けてない現実が分かってきたのです。

品種の遺伝的な力による解決が無理なら、耕種的な解決方法がないだろうか?佐賀県でもいろいろな取り組みがなされてはいるそうですが、今年に限っては効果がなかったそうです。

 

八方ふさがりな時は基本に帰るのが一番。そして次のように考えを巡らせました・・・。
野菜はある時点で大きく生長の仕方やその方向が著しく変化するときがあり、その変化を上手く乗り越えると良い結果が生まれます。あまり注目されることのないこの「生長のスイッチ=SW」に注目してみようと思いたったのです。

なお、べと病についてはホウレンソウについて書いたこちらをご覧ください。キーワードはべと病の「卵胞子」です。 畑で通常問題視されるのは二次感染の際の「分生胞子」ですが連作障害に関係する一次感染源の「卵胞子」を圃場に持ち込まないことがより大切であることが分かってきました。ご参考になさってください。

 

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暑中お見舞い申し上げます。 平成28年盛夏

 

玉ねぎをはじめとして野菜の不作が連日のように報道されていましたが、昨年と同じように秋野菜の種まきが始まろうとしております。失敗を繰り返さぬため少々考えてみることにしました。

さて、野菜つくりは子育てと似たところがあるようです。幼児期、小学校低学年、中学校と発達段階のハードルをクリアーしながら子どもは成長しますが、野菜にも生長の明瞭な分岐点=スイッチ=SWが存在するからです。そのようなSWの前後の変化はとても興味深いのでご紹介することにいたします。テーマは生長のSW=「スイッチ」です。

 

【中晩生系玉葱】~9月下旬蒔き5月中下旬どり
12月~1月は全然太らず一時的に休眠します。(年明けに遅く植えてもそれなりに太るのはこのためです。)
ただし越冬時に太りすぎるとトウ立ちのSWが入ってしまいます(早く種をまいたり、苗が大きすぎたり、暖冬の時は特に危険です)。

2月後半の気温の上昇とともに目覚めたように太り始めますが、この時期に十分肥大しなければ絶対ダメです!
なぜなら温度上昇と長日条件(※)が重なると成長の最後のSWが入ってしまうからです。この玉肥大SWが入ってしまうともう葉っぱは茂らなくなり葉っぱになる部分が鱗片化し玉になり始めます。(一般的にこのSWが切り替わるのは3月下旬のお彼岸以降~4月上旬です。) だから急激に大きくなるべき2月~3月に大きくなれなかったら小さい玉で終わってしまうのです。

これが今年の不作の最大の原因であり、1月の大雪以降の低温・多雨・少日照がその誘因となったのは間違いありません。
※長日=昼が夜より長くなること

 

【早生系玉葱】~9月上旬-中旬蒔き、2-3月どり
休眠SWや長日SWが明瞭でない点が中晩生系との大きな違いです。12月~1月も休眠せずに肥大し続けます。だから超極早生系だと暖地では(1月~)2月穫りが可能なのです。今年は12月までは暖冬でした。
したがって中晩生系の不作をよそに早生系はそこそこ上作だったのです。

早生系は11月~12月の肥大が収穫に大きく影響を与えます。もし肥料不足・乾燥・少日照・低温などのストレスを受けると分球が起きます。

今年も天候不良は十分予想されますので、このストレスSWが回避できれば早生の作付が今後も増えるのではないかと予想しています。

 

【縦横SW】
主に根菜類ですが最初は縦に成長し、その後は横に切り替わります。
同時進行はしません。

大根のこの縦横SWは種まき後約二週間位で入ります。縦横SWの入る前に水分が多すぎると短根になります。入った後乾燥してしまうと辛みが強くなったり組織が荒くなったり味や肌が悪くなってしまいます。

人参の縦横SWは種まき後1.5か月位で切り替わりますが、大根とは真逆です。前半は十分な水分がないと逆に短根になってしまいます。後半は乾燥気味がよく、径の肥大とともに色が濃くなり味が濃厚に変化します。

 

【枚数SW】
白菜やキャベツやレタスなど結球するためには十分な葉っぱの枚数が必要です。秋は急激に日照量や温度が下がりますのでゆっくりしていると12月の成長ストップSWまでに葉数が足りず結球できずに終わってしまいます。
「春は人より遅く、秋は人より早く蒔く」が鉄則です。
ただし、例外もあり、逆に越冬キャベツは本葉10枚~15枚以上で1~2月の厳寒期を経験すると結球せずにトウ立ちします。 (同様に、玉葱や葱や牛蒡などグリーンプラントバーナリー型の越冬野菜の)必要以上な早蒔きは厳禁です。