おばけ! トウモロコシ

先週の話です。神奈川県M様より2枚の写真が送られてきました

 

ぬぁ・・ん・・だ・・こ・・りゃ????
と叫んだのは改めて申すまでもありません。

20161003_%e9%bb%92%e7%a9%82%e7%97%851_%e7%a5%9e%e5%a5%88%e5%b7%9dm%e6%a7%98

20161003_%e9%bb%92%e7%a9%82%e7%97%852_%e7%a5%9e%e5%a5%88%e5%b7%9dm%e6%a7%98

当店でお買上げのスィートコーンです。
春作、秋の抑制栽培と、一年で二度作れる品種の7月蒔きの分に発生した不思議な現象。M様からはどうしてこうなったのか?病気?生理障害?ストレス障害?
こうなった原因と、どの様な対策をすれば良いのかとのお問い合わせのメールがありました。

 

皆様もちょっと考えてみて下さい・・・・
実は私も初めて見る写真で、私の頭のデーターベースには登録がなく、真っ白の状態。
ちょっと焦りました。

業界の先輩に聞いてみて、もし分からぬ様だったら、育種元やタキイやサカタの専門家に問い合わせてみようと思っていた矢先、先輩のお店にたまたま居合わせたサカタの専門家が一目見るなり、
あっ「黒穂病だ!」「危ない!」との返事が返ってきました。

 

「黒穂病」、なぜ危険なのかを調べてみました
生理障害や虫害ではなく、糸状菌(カビ)が原因の病気でした。それも大変珍しい病気です。
春作には発生せず、7月中旬蒔きの抑制栽培に発生していますので、高温多湿時に発生するとのことです。また肥料が過剰時に発生しやすいとのことです。
しかし品種依存性はありません。どの品種ででも発生いたします。多種多様なレースやタイプが存在するとのことですが、詳しいことは分かっていません。耐病性品種は日本には存在しなくて、登録農薬も存在しません。つまり現状では抜き取って焼却処分しか対策がないということです。

以前、玉葱のベト病で述べたことですが、ベト病は卵胞子でしたが、この病気も厚膜胞子を形成して土中で5年以上も生き続けるとのこと。大変生命力が強く、有効な薬がないとなると耕種的な対策も非常に困難なようです。トウモロコシだけに発生するとのことですが、同類のイネ科にも移る可能性があるかどうかは文献に記載がなかったので断定できません。いずれにせよ、トウモロコシは連作しても大丈夫!と言う先入観が脆くも崩れた感じがいたします。

もし、この病気が出たら、胞子が拡散する前に安全な場所に廃棄するか、できるだけ焼却処分をした方が良さそうです。また発生があった畑で、トウモロコシの連作をすることは大変危険です。

 

一方・・・
メキシコではトウモロコシ版トリュフと言った方がよいかもしれませんが、「ウイトラコチェ」という名前で、この病気にかかったトウモロコシが珍重されているとのこと。大変驚きました。
表面は白いのですが、中には黒い菌糸がいっぱいで気味が悪い状態のものを実際に食べるのだそうです!!!うぇ!
菌糸が抗生物質の様なものを生成するとかで(ほんとに有益なの???)、人体には影響がないとのことで珍重されているのだそうですが、日本では焼却処分するのが賢明なようです。

 

黒穂病という名前は知っていたのですが、私、実物を見たのは初めてでした。要するにで頭のデータベースには存在するのに検索できなかったのです。業界の先輩もかなりトウモロコシについては博識なのですが写真の判定については即断できなかったようです。
ただ、サカタの専門家は、大産地ではかなりの頻度で発生するらしいので見知っていたそうです。(さすがトウモロコシのサカタ!場数が違うのだなと実感。)
しかし、この病気が出たとなると先ほどの様に有効な薬もなく大変防除困難な病気であるがゆえなかなか表沙汰になる事はないのだそうです。このような病気が発生したことがマスコミにもれるとその産地つぶれちゃいますから!

 

以上の様なわけで、今回はM様に心より感謝いたします。大変良い勉強になりました。また写真の掲載を快諾いただきましたことも重ねて御礼申し上げます。